僕を象徴するエピソード

出会い系で巧妙なボッタクリ

天国から地獄へ


会社に入ってすぐの頃、
出会い系サイトが流行っていた。

会社の人も半分くらいは
やっていたと思う。


僕も興味本位でコッソリやっていた。


色んな女の子へ毎日メールをしては
返信を待つ、そんなことを繰り返していた。



女の子から返信が来ることなんて
ほとんどない。


たまに来たかと思えば、
サクラからのメールである。



そんなある日、

「メールありがとうございます。」

女の子から1通のメールがあった。



色んな女の子へメールをしていたので
その子にメールしたかどうかもわからなかったが、
サクラではなさそうである。


メールへ返信すると、すぐに女の子から返信がきた。


「いま居酒屋で友達と飲んでるんです。」
「ご一緒にどうですか?」


いきなりの誘いのメールである。

怪しすぎる。


またどこかの怪しいサイトへ誘導されるのか。
そんなことが頭をよぎった。



明日も仕事があるから遠慮しとく、と
理由をつけて断った。


すると女の子は、

「残念です。それでは電話番号だけでも交換しませんか?」
「私の番号は○○です」


こんな簡単に自分から電話番号を教える子がいるものか。
やっぱりサクラだろ、と思った。



でも逆にこんな下手くそな誘導をするサクラが
今時いるのか。実は本当に普通の女の子なんじゃないか。



僕はこの子が普通の女の子なのではという
希望を胸に、自分の電話番号を彼女へ教えた。



その直後、電話がかかってきた。
彼女からだ。


ドキドキしながら電話に出る。
通話
「もしもし」


可愛い声の女の子である。


本物の女の子だったのだ。
僕の心は踊った。



10分ぐらい話したところで、
彼女が切り出す。


「いま親不孝通り沿いの居酒屋で飲んでるんです」
「少しだけでいいので会えませんか?」


その時の時刻は深夜23時。

明日も仕事がある。
でも行けない距離ではない。


僕に迷いはなかった。
バイクへ乗って親不孝通りへ向かった。



親不孝通りに着いた。

彼女へ電話をし、どこの居酒屋にいるか聞いた。


「居酒屋が閉店したから別の店に来てるの」
「店の近くのAビルの前で待ってるね」


僕はすぐに移動した。


Aビルへ到着するが彼女らしき人物はいない。
というか、全く人がいない。
ビル 彼女に電話をするが、電話にでない。




いつになっても彼女は来ない。

そして何度電話してもでない。



帰ってしまったのか、それとも
からかわれていただけなのか。



諦めて帰ろうとしていた時に、
小柄な男が歩いて近づいてきた。


「待ち合わせっすか?」


普段なら無視するのだが、
むしゃくしゃしてた僕はその男に
本当の事を話した。


「もしよかったらこの店でイベントやってるんで
 着てくださいよ」

と言いながらチラシを渡された。


なんの店かよくわからなかったが、
お酒を飲むところなんだなとはわかった。


「若い女の子がいっぱいで大盛り上がりですよ」


僕は大勢があるまるパーテイーのようなものが大嫌いだ。
例え女の子がたくさんいても関係ない。


断ろうとしたその時に電話がかかってきた。

彼女からだ。


「ごめん、電話気付かなかった」



友達と盛り上がっててAビルまで来れなかったので
居酒屋まで着てほしいとのこと。



店名を聞くと、男からもらったチラシの店だ。


なんだこの偶然は?

違和感を感じつつも彼女の話を聞いた。



「近くに男の人いない?その人に参加料を払ってから着て欲しいの」



なんでここに男がいるのを知っている?参加料?
さっぱりわけがわからない。


彼女いわく、その居酒屋でパーティーをしていて
前金で5000円払わないと参加できないらしい。



彼女との電話を切り、男に彼女から聞いた内容を話した。


「もし参加されるんだったら参加料をいただきますね」


彼女に会うには参加料を払うしかないと思い
男へお金を渡した。



お金を受け取った男はそそくさとその場を去った。




チラシに書かれた地図を見ながら
歩いて移動した。



地図の場所についた。

3階建ての雑居ビルの2階。



店の前に着ても人の声すらしない
薄暗く静かなところだ。



恐る恐る店のドアをあけて店内に入る。
バー カウンターに1人ウェイターがいた。


「いらっしゃいませ、どうぞ」


カウンター席へ通された。


「女の子と待ち合わせですよね?
 いま準備してるので少し待ってくださいね」


準備?言ってる意味がよくわからなかったが、
軽く聞き流して少し待ってみた。


薄暗くBGMもなく静かなところだ。
カウンターにいるウェイターの男と二人っきり。


女の子がたくさんでパーティーをやってるという
雰囲気は全く感じられない。

店を間違えたのか。


「何か飲まれますか?」

ウーロン茶を頼んだ。


話しかけられるわけもなく、沈黙の時間が。



気まずい沈黙の時間に耐えられず、
出されたウーロン茶に口をつけた。


その瞬間、


「飲み放題、前金1万5千円になります」


騙された。


その時に全てを悟った。


電話の彼女も、話しかけられ小柄な男も、
そしてこの店もグルだったことを。


無言でその店を出た。

「お客さん待ってください。無銭飲食ですよ」

ウェイターが呼び止める。


その声も無視して出て行った。


追いかけてくるわけでもない。


無駄な時間とお金を失った。


この出来事をきっかけに
僕は二度と出会い系サイトを
利用することはなくなった。